日東紅茶100周年をきっかけに、クラフトビールの醸造所・Yellow Monkey Brewingとコラボレーションしたオリジナルビール「CHA-GASUMI -茶霞-」。始まりは、綿密に計画された商品開発ではなく、ある日の何気ない雑談でした。そこから社員のみなさんを巻き込み、紅茶とビールを飲み比べ、味わいの方向性の検討、最後はYMBのブルワリーで、紅茶のプロとしての知見をもとに、ビールに最適な茶葉の抽出時間を一緒に検討するところまで。100周年だからこそ挑戦できた、新しい紅茶の可能性を探るビールづくりの裏側をご紹介します。
ピクニックメンバー:
鈴木 真理子(企画本部 企画開発・ソリューション第一部)/ 執筆
雑談から始まった、100周年の新しい挑戦
100周年という大きな節目に、これまで日東紅茶と接点のなかった人にも紅茶のおもしろさを届けられないだろうか。NITTOH 100 PICNICのメンバーでは、そんなことを考えながら、紅茶をこれまでとは少し違った角度から楽しむ方法を探しています。
今回のビールづくりも、最初から計画されていた企画ではありませんでした。
NITTOH 100 PICNICのメンバーの一人に、Yellow Monkey Brewing(以下、YMB)のタップルームで料理長をしている友人がいました。「せっかく100周年なんだし、何か面白いことができるといいよね」。そんな雑談をしているうちに、「YMBと一緒に紅茶ビールの企画ができたら面白いんじゃない?」という話になり、100周年施策のアイディアを三井農林社内で募った際もお酒を作りたいというアイディアが出ていたことも重なって、あれよあれよという間に企画が動き出しました。
こういう偶然から何かが始まっていく感じは、個人的にもとても好きです。
もちろん、ただ珍しいものをつくりたかったわけではありません。100年にわたって紅茶を届けてきた日東紅茶が、ビールというまったく違う文化と出会ったとき、紅茶をどんなふうに捉え直せるのか。飲み方やカテゴリーを少し飛び越えることで、これまでとは違う人に紅茶の魅力を届けられるかもしれない。
そんな期待から、今回のコラボレーションが始まりました。
40人で飲んで、考えて、味わいの方向性を考える
まず取り組んだのは、「どんなビールをつくるのか」をみんなで考えることでした。
5月下旬の夕方の3時間、三井農林オフィスの会議室を貸し切り、社内ワークショップを開催。約40名のみなさんが入れ替わりながら参加し、LAGER、IPA、HAZY IPA、WEIZEN(ヴァイツェン)、STOUT (スタウト)の5スタイル、約20種類のクラフトビールを飲み比べました。

その隣には、アッサム、ウバ、ケニア、キャンディ、ディンブラ、ニルギリ、ダージリンという7種類の紅茶。
会議室いっぱいにビールと紅茶が並んでいる光景は、改めて振り返ってもなかなか不思議なものでした。

「IPAとダージリンは、どちらもインドというストーリーがあるし、味も合うのではないか」「STOUTならクリーミーさがあるから、ミルクティーのような表現ができるかもしれない」「HAZY IPAの濁りやジューシーな口当たりは、ロイヤルミルクティーのイメージに近いのでは」。
ビールを飲み、紅茶を飲み、ときには実際に組み合わせながら、それぞれが感じたことを自由に話していきます。
完成した商品について意見を聞くのではなく、監修するうえで、企画の段階から社員のみなさんが参加し、味わいの方向性を一緒に考えていきました。
このワークショップで出た意見をもとにYMBと検討を重ね、私たちがたどり着いたのが、ロイヤルミルクティーをイメージしたHazy Tea Aleでした。

紅茶のプロとビールのプロで、ロイヤルミルクティーのようなビールをつくる
方向性が決まってからは、YMB による商品設計のもと、当社は茶葉選定や抽出に関する知見を提供しました。
目指したのは、単に「紅茶の味がするビール」ではありません。日東紅茶で約30年にわたり愛されている商品「ロイヤルミルクティー」の、豊かでなんだか幸せな気持ちになるような飲用体験そのものを、ビールとして表現することでした。
ここで大きなテーマになったのが、牛乳そのものを使わず、どうロイヤルミルクティーらしい見た目と口当たりをつくるか。
小麦やオーツ麦、ラクトースによって、やわらかな濁りとなめらかな口当たりをつくる。一方、紅茶は香りと味わいをしっかりと感じてもらうため、アッサムとウバの2種類を使用しました。その量は、合計約22kg。発酵や低温環境で紅茶の香りが弱まることも見越した、かなり大胆なレシピです。

さらに、同じタイミングですべての茶葉を入れるのではなく、投入するタイミングをずらし、香りや味わいにレイヤーをつくることも検討しました。

そして実際の仕込みでも、紅茶とビール、それぞれのプロの知識が交わる瞬間がありました。

茶葉を投入する前の麦汁を開発に携わったみなさんで試飲し、「ここから何分抽出するのがいいのか」をその場で議論を重ねます。
ビール醸造についてはYMBがプロですが、紅茶の最適な抽出時間については日東紅茶がプロ。そのため、YMBの醸造レシピにも、あえて事前に抽出時間は記載されていませんでした。
現場で味わいを確認し、紅茶の専門知見を共有しながら、YMBの製造判断のもとで抽出条件を決めていきました。

どちらか一方が答えを持っているのではなく、それぞれが自分たちの専門性を持ち寄らなければ完成しない。紅茶のプロと、ビールのプロ。その二つが、同じ麦汁を前に頭を突き合わせる。今回のコラボレーションを象徴する場面だったように思います。
そうして完成したのが、「CHA-GASUMI -茶霞-」でした。

グラスに注ぐと、やわらかく霞んだ色合いはまるでロイヤルミルクティー。ひと口目からアッサムとウバの華やかな香りが広がり、オーツ麦とラクトースによるなめらかな口当たりが続きます。それでいて、後味はビールらしく軽やかで爽やか。
名前の「茶霞」には、この霞がかった美しい色合いと、良質な茶葉が霧や霞の立つ土地で育つことが多いという、紅茶づくりへの敬意を込めています。
完成したビールは、YMBをはじめ、各地のビアバーなどでも少しずつ楽しんでいただける予定です。
異なる文化にふれることで、紅茶の新しい可能性が見えてくる
今回のビールづくりを通して改めて感じたのは、紅茶には、まだまだ私たち自身も気づいていない楽しみ方があるということです。
そして、その可能性は、紅茶のことだけを考えていても、なかなか見えてこないのかもしれません。
ビールという異なる文化と出会い、社員のみなさん自身が味わいを確認し、考え、企画・監修に参加する。その過程があったからこそ、「紅茶って、こんなこともできるんだ」という発見が生まれました。
100周年は、これまでの100年を振り返る節目であると同時に、次の100年に向けて新しいことを試してみる機会でもあります。「CHA-GASUMI -茶霞-」が、その小さな一歩になればと思っています。

※本コラボレーション商品は、酒類製造免許を有するYellow Monkey Brewingが製造しています。飲酒は20歳になってから。飲酒運転、妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。
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