復刻缶・開発レポート

#レポート

2026.09.04

昭和の缶が、よみがえるまで。日東紅茶・復刻缶の開発レポート

井上 香子 / 企画本部 企画開発ソリューション第一部

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日東紅茶は、2027年に迎えるブランド誕生100周年に先駆けて、昭和の時代に親しまれた「青缶・紫缶・白缶」の3種類の復刻缶を企画。2026年6月17日より、公式オンラインショップ「日東紅茶 TeaMart」で先行発売しています。きっかけは、お客様から届いた「また、あの缶を」という声から。その一言に応えるため、味づくりからパッケージの再現まで、社内外のメンバーが手さぐりで進めた約1年間。その開発の道のりを振り返ります。

ピクニックメンバー:
井上 香子(企画本部 企画開発ソリューション第一部) / 執筆
木田 瑚(営業戦略推進本部 DtoC営業部)
河西 夏実(営業戦略推進本部 DtoC営業部)
須田 愛(R&D本部 茶葉開発室(当時))
堤 妙(社内デザイナー)

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お客様からの熱い声で動き出した、復刻プロジェクト

きっかけは、2024年に販売した「白缶-復刻版-」。日東紅茶TeaMartとして初めての復刻商品でした。会員限定、少量販売からスタートしたこの商品は、昭和当時の白缶より小さめの1/8ポンドサイズを採用し、デザインも紙を缶に巻き付ける仕様でした(昭和当時の白缶は最小でも1/4ポンドサイズ)。

発売当時、「昭和当時から日東紅茶をご存じの会員様がいらっしゃれば、懐かしんでいただけるかもしれない」と期待する一方で、手探りの企画でもあり、不安も大きかったと日東紅茶TeaMart担当の河西は振り返ります。

そんな中、購入されたお客様から「昔の白缶は、もう少し缶が大きかった気がする」「当時のような印刷缶で青缶、紫缶も復刻してほしい」といったメッセージをいただきました。

2024年版は好評のうちに完売しましたが、想像以上に反響があっただけでなく、昭和当時の商品を覚えてくださっている方がいて、さらに本格的な復刻を望む声があることに心を動かされました。それ以降、お客様の声にお応えしたいという思いから、日東紅茶TeaMart担当として本格的な復刻版を形にできる機会を探していました。

ちょうどその頃、社内で日東紅茶100周年に向けた企画募集があり、同じく担当の木田と共に、2026年6月に控えた日東紅茶TeaMart5周年という節目に合わせた企画案が社内の審査に通り、実現に向けて動き出すこととなりました。

その企画案を受けた私は頭を抱えました。開発フローは、見通しが立たないほど課題が山積みでした。社内で当時の商品について知る人物を探しだし、ヒアリングを実施。まさに暗中模索のスタートでした。限られた時間の中でプロジェクトを実現させるため、まずは各担当者に、この企画への思いを伝えることから始めました。意義と方向性さえ揃えば、それぞれが力を発揮してくれる。そう信じて走り出しました。

昭和当時の香味と、現代の味覚と。その両方を一つの缶に

復刻商品で最も大切になるのが、中身の「味づくり」です。担当したのは、R&D茶葉開発室の須田。試作では、昭和当時の香味の再現と、現代の人が好む味の傾向の要素をどこまで入れるか、そのバランスの取り方に苦労したといいます。

「私自身、紅茶は嗜好品なのでおいしさには正解がないと普段から考えています。今回は、昭和当時の香味の再現が正解だとは考えつつも、例えば華やかな香りに寄せてみたり、渋みをまろやかにしてみたり。試行錯誤しながら香りと味の方向性について、いくつかの候補処方を作成しました。さらに、ポットで淹れたとき、カップで淹れたとき、ミルクと合わせたときなど、いくつかの抽出条件も検証し、候補を絞り込んでいきました。最終的には、3缶全体で考えたときに当初掲げていた、復刻の味と現代の人が現代の人が好む味のバランスが取れるような処方にできたのではないかと思っています」と須田は振り返ります。

白缶:クオリティーシーズンのウバをブレンドした一杯。ウバならではの華やかな香りが、まっすぐ感じられる。
紫缶:スリランカのウバとディンブラをブレンド。ストレートでもミルクでも楽しめる、懐の広い味わい。
青缶:スリランカのディンブラ、南インド、和紅茶をブレンドし、食事にも、どんな時間帯にも寄り添う一杯。

どの缶も、産地で茶葉を育て続ける現地生産者たちの真摯なものづくり、長年かけて築いてきた現地生産者との関係と、確かな買い付けの技術があってこそ生まれたもの。そこに、積み上げられたブレンドやペアリングの知見と技術、現代の人が求める味の傾向が掛け合わされています。当時の味をただ再現するだけでは足りない、現代の人が飲んでおいしいと思える一杯にしたかった。そんな想いが、この3種類の缶には込められています。

版下は、残っていなかった。実物だけを頼りにしたトレース

味づくりと並行して進められた、パッケージデザインの再現。開発が始まる前から、当時のデザインの版下データがどこにも残っていないことはわかっていました。その役割を任されたのは社内デザイナーの堤。頼れるのは、社内に保管されていた実物の缶と、一部の販促資料のみ。その一つひとつを手がかりに、当時のデザインを手作業でトレースしていきました。

「デザインの再現は今回一番の難点でした。デザインデータが存在しない当時の缶のデザインを、一つひとつ実測・観察しながらトレースしていく作業自体も大変でしたが、当時は手書きのデザインだったため、シリーズでフォントが揃っていなかったり、文字のバランスが不均一だったりする部分をどう調整するかに頭を抱えました。揃えすぎると手書きの味わいが消えてしまう一方、そのままでは違和感が残る。加えて、経年劣化で退色した色味も本来の色を推測しながら補正するなど、当時の魅力と現代の見やすさ、その両方が成立するバランスを探るのが大変でした。時間のかかる作業でしたが、その分やりがいのある仕事で、このプロジェクトに携わることができたことを大変嬉しく思っています」と堤は振り返ります。

さらに、もう一つの壁がありました。現在、当社では缶製品の取り扱いがありません。缶の製造を委託ができる取引先すら、なかったのです。それでも「当時のあの缶で」という声に応えたい。あらゆる可能性を想定し、社内外を巻き込みながら道を探りました。

金属缶は、一般的な資材に比べて製造に時間がかかります。だからこそ仕様を早い段階で固め、中身の開発もプロモーションも同時に走らせる。まさに綱渡りのような進行でした。それでも、チームの連携で、当初は難しいと思われた2026年6月の先行発売にこぎ着けたのです。

100周年の幕開け。ECから、リアルな場所へと広がっていく

発売後、ひと足先に受け取ってくださったお客様から、少しずつ喜びの声が届きはじめました。「本当に美味しい」「懐かしい気分になった」といった声や、昭和のデザインを再現した印刷缶に対しても、「レトロでかわいい」「素敵な缶」などの声が寄せられています。

なかでも3種類の缶を組み合わせたコンプリートセットは、発売から1週間で150セットを超える注文をいただきました。数字も嬉しかったのですが、それ以上にお客様がSNS等でこの商品を紹介してくださり、缶を手にした瞬間のわくわくや懐かしさまで含めて楽しんでいただけているのだと感じました。

今後は、2027年の100周年記念イヤーに向け、ECサイトでの展開に留まらず、イベントなどのリアルな場で皆様に復刻缶を楽しんでいただける機会を増やしていきます。これからの日東紅茶の取り組みに、ぜひご期待ください。

※2026年発売の復刻商品は、2024年の「白缶-復刻版-」とは別商品です。2024年版の反響とご要望を受けて、新たに企画・開発した復刻シリーズとなります。

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